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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
特許出願のクレーム作成マニュアル
葛西 泰二 著
(オーム社)
上記の本は、初版が1999年頃に出版され、その後、2012年に加筆・修正がなされて再発刊されたものです。
初心者の頃に先輩に勧められて購入し、以後、ことある毎に参照しています。
クレーム起草において多面的なアプローチの方法を、具体的な事例を用いて解説されており、読みやすく内容も深いという優れた本だと思います。
発明の本質を把握するための練習問題として、角形の鉛筆の話は聞いたことがある人も多いでしょう。その話は、私が知っているだけでも複数の本で登場します。
しかし、この本が最も詳細に、しかも最も深く角形鉛筆の技術を解析し、クレーム化して見せてくれます。著者の先生の知識や経験、さらには洞察力が光っています。
勤務時代は、起案したクレームに対するボスのチェックは厳格でした。それもそのはずです。クレームがマズければ、それに続いて作成される図面も実施例も引っ張られるからです。
今では、起案したクレームを見直すとき、私は当時のボスになったつもりで細部までチェックします。
そして、「おまえもまだまだやな・・・」などと自分に対してつぶやきながら、赤ペンを入れています。
ここからは余談です。
弁理士の友人が、日本酒とともに事務所に遊びに来てくれました。
何と、彼はこのエッセイや事務所のホームページを見てくれたそうです。うれしかったニュースです。
商標の類否 改訂版
櫻木 信義 著
(発明推進協会)
私は、上記の本の初版を買い、実際に使っていました。
商標同士の類否判断の傾向を調べる際によく参照しています。
初版は2011年の出版だったので、いつ改訂版が出るのかと待っていたところ、今年の夏に出たので早速購入しました。
とあるウェブサイトでの紹介によると、「著者が数多くの商標の類否の審・判決を四半世紀にわたって蓄積・分析し、項目ごとにリスト化したもの」だそうです。
私が気に入って使用している理由は、類否判断のパターンを分析し、項目分けがうまく行われている点です。紹介文のとおりですね。
著者の先生とは、以前に弁理士会の商標委員会でご一緒させていただいたことがあります。
企業の知的財産部で実務経験を積まれた話を、懇親会の席でうかがったのを覚えています。
商標実務に携わっている者であれば、類否判断の際の分析の視点が感覚として身に付いているのが通常です。ただ、それを上記の本のように分析し、体系化して整理しているところに、著者の凄さが現れています。
判断に迷ったときには、この本で下調べをして大筋を把握し、審査例などをつぶさに調査して当該案件における結論を出す、ということをしています。
商標の類否判断は日常的に行う業務なので、たいへん重宝しています。
余談ですが、最近アマゾンのブランド登録のため商標出願をしたいという相談を何度か受けました。
なるほどという感じです。販売ルートとして非常に大きいですものね。
新訂 公証人法
日本公証人連合会 編
(株式会社 ぎょうせい)
この本は、公証人により行われる公証手続を、公証人の立場から詳細に解説した解説書です。
弁理士が公証人のお世話になる場面として最も多いのが、外国出願関連で委任状などに対して受ける認証ではないでしょうか。出願する国によっては、公権力による証明を受けることにより一定の証拠力を備えた文書の提出が求められることがあります。
また、研究ノートやウェブサイトを印刷出力したものなどに確定日付を受けたり、図面などを封印して署名した上で確定日付を受けたりするのは、知的財産業界では普通に行われることです。
私も事務所勤務時にこれらのことを教わりました。
先日、事実実験公正証書について検討することがあり、上記の本を読み込みました。あいにく、費用が高額になりそうだったために断念しましたが、おかげでどのような場面で用いるのが適切なのかがよく分かりました。
ところで、上記の本には、何と日本弁理士会が出版する月刊誌「パテント」の記事が引用されている箇所がありました。読んでみると、当時の特許委員会が、日本公証人連合会と交流を行い、弁理士がどのように公証制度に関与し、利用するとよいのか研究されていたようです。
不肖の後輩が間違いをすることなく実務をできているのは、偉大な先輩方の研究成果のおかげです。
明細書作成実務講座
泉 克文・吉田 正義 著
(東洋法規出版)
標記の本は、明細書作成実務の未経験者に対して、明細書作成のための基本的な事項を説明したものです。
その昔、未経験者は、特許事務所に就職して、いわゆるOJTの手法で、ボス先生や先輩達に明細書作成のイロハを叩き込まれていたようです。
当時は標準的なテキストなど乏しく、明細書作成のノウハウは、それぞれの弁理士や事務所により磨き上げられ、これらが実務の中で後進たちに伝授されていました。
時代は下り、弁理士試験の合格者が増加すると、弁理士試験に合格しても特許事務所に就職できないケースが出てきました。
このような新人弁理士達が最低限のまともな仕事をできるよう教育する必要性が高まり、明細書の書き方を指南するテキストなどが出てくるようになりました。
標記の本には、かつてOJTにより伝授されていた明細書作成のイロハが、まるで噛んでふくめるように分かり易く書かれています。
著者の先生方も、おそらくこのようにして特許事務所で明細書の書き方を教わり、成長されたのでしょう。
私は勤務している頃、ボスから多くの大切なことを教わりましたが、それらがこの本にもしっかり書かれているのです。
そういう本ですので、特に目新しいことが書かれているものではありません。
弁理士なら当然に知っているべきことや考えるべきことが、ストレートに示されています。
でも、そういう大事なことほど、つい忘れたり落としたりしてしまいがちです。
この本は、現在では絶版しているようです。 ただ、ここで書かれていることの重要性は、現在も変わるものではありません。
若手法律家のための法律相談入門
中村 真 著
(学陽書房)
この本は、若手弁護士や若手司法書士が法律相談を受ける際の心構えやポイント、トラブルにならないための注意点などを解説したものです。
私は法律相談を職務とするものではありません。
しかし、発明相談や知財相談は日常的に行っています。
弁理士が受ける相談は、対象が発明や商標などであるため、相談される内容もある程度予想できるものです。
また、相談者は、自ずと企業や自治体、個人事業者などになります。
これに対して、法律相談となるとその対象は法律問題全般でしょうし、相談者も様々でしょう。予想もつかないような相談をされることもあるのでしょう。
この本には、特に若手の法律家が法律相談を受けるに際して準備するべきことや心構え、注意すべきポイントなどが、実に細やかに示されています。
弁理士は法律相談を職務とするものではありません。ですが、私はこの本を何回も熟読しました。
なぜか?
参考になるという理由だけではありません。
たまらなく面白いのです。
この本には、イラストが豊富に盛り込まれています。
そして、イラストに描かれた人物による関西弁の一言が強烈なパンチ力を持っており、読者を爆笑させるのです。
この本は軽い読み物ではありません、実務書です。読者を爆笑させる実務書を、私は初めて読みました。
では、面白いだけで内容は無いのかというと、まったくそのようなことはありません。
上記のとおり、相談を受ける側から見たポイントが具体的に示されており、いずれも法律相談の現場で起こりそうなことなので、たいへん説得力があります。
弁理士にとっても重要な示唆を含む本です。