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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
特許調査とパテントマップ作成の実務
東智朗・星野裕司(共著)
オーム社
特許調査を行うとき、検索式の立て方って事務所毎に違っているなぁという印象を以前から持っていました。 そこで調査の進め方について多くのパターンを持っていた方が、漏れなく調査ができるのではと思い、標記の書籍を図書館で借りて研究しました。
著者のお二人は同業の方であり、しかも調査については相当に精通されている様子。 具体的な内容については述べませんが、調査を行うステージに応じて(他社動向調査、無効調査、開発方針策定のための調査など)検索式の立て方、報告書の作り方、マップの作り方など実にきめ細やかに解説されています。
出版されたのが平成23年ですので、当然ながら特許電子図書館(IPDL)を用いた調査であり、IPDLの後継であるJ Plat Patを用いた調査の解説ではありません。 しかし、J Plat Patを用いた調査にも十分適用できるものであり、IPDLが廃止されたとはいえ、この本の価値は少しも下がっていないと思います。
特許調査は、とにかく時間を使って多くの文献に目を通すという側面がありますが、調査目的の把握、調査方針の定立、技術的特徴に対する切り込み方など、知識と経験に加え、多角的にモノを考えているかが問われる業務だと思います。
特許調査ビギナーから上級者まで、調査に関する新たなヒントを得ることができると思います。
余談ですが、今年の上半期にはJ Plat Patがサイバー攻撃により一週間ダウンし、大変な目にあいました。 有料のデータベースなどを利用できる状態にしておき、普段から「備えあれば憂いなし」にしたいものです。
特許出願の中間手続基本書〔第4版〕
大貫 進介 著
(発明推進協会)
標記の本は、中間手続に関する実務上の基本事項を解説したものです。
著者も述べられているように、この本は平成28年4月までに改訂された審査基準および審査ハンドブックを全て盛り込んであり、最新の判決例もフォローしているものです。
拒絶理由通知を受け取ると、(依頼者には申し訳ないですが)私はワクワクします。
審査官が立てた論理の道筋を頭に入れ、どのような対応ができるのか、依頼者にとって最大の利益を獲得できるのはどの方策かを考えます。頭を使って対応策を考えることが楽しいのです。
おそらく、こう考えるのは私だけではないでしょう。
新人から大ベテランの先生方まで、およそ弁理士であれば、拒絶理由をくつがえすということに、楽しさを感じずにはいられないのではないかと思います。
この本には、そのような対応策を考える際のヒントが盛り込まれています。
それは、けっして奇策を開陳するというようなものではありません。
判例や審査基準を正しく理解した上で、正しく思考を深めてベストの対応策にたどり着くための過程が、ていねいに説明されているのです。
明細書の書き方を指南する本と同様に、中間手続に関する本も最近では多く出版されています。
迷ったときには参考にできる良書も多いのですが、まれに独善的な奇を衒ったメソッドが書かれているものもあります。
本書は、オーソドックスな、そしてハイレベルな良書であると私は思います。
契約書作成の実務と書式
企業実務家視点の雛形とその解説
阿部・井窪・片山法律事務所/編
有斐閣
このブログを構想したとき、まっ先に浮かんだのが標記の本です。
私は普段、必要な事柄を調べるため多くの本のお世話になっていますが、その中でも、この本は群を抜いて利用頻度の高い本です。
ここでは本の内容を書きません。この本の価値は本を購入した人が受けるべきだと思っているからです。
ここでは、この本の良いところを思いつくままに書いてみたいと思います。
この本は雛形が非常に充実しています。
ただ、多くの雛形を掲載しているだけの本ならば、既に多く世にあるでしょう。この本のすばらしいところは、雛形の充実度よりも、各条項のそれぞれの根拠が丁寧に解説されていることだと思います。
契約当事者には個別の事情があって、雛形の文言をそのまま用いることができる場合というのは案外少ないのです。
この本のように丁寧に教えてもらえれば、それぞれの事情に応じて文言をアレンジし、最適な条項を作成することができます。
しかも、根拠となる書籍・資料がたいへん豊富であり、それらも合わせて参照してみるとより理解が深まり、実務に耐えられる知識を得ることができます。
ここで挙げられている資料ですが、メジャーな書籍だけではなく、「よくここまで探したな・・・」と思ってしまうような書籍も含まれており、いかに編者が徹底的に調べたかがよく分かります。
私はよく、デザイナーとの委託契約書をドラフトするときにこの本を参照します。発注者(なぜか自治体が多いのですが)の側から考えるときもあれば、デザイナーの側から考えるときもあります。なお、この本には、デザインの委託契約書の雛形は無いのですが、状況がよく似た契約の例は豊富にあります。
この本は、タイトルのとおり契約書作成実務を解説するものであり、その範囲は知財に限られていません。
しかし、編者は知財実務者の皆さんがよく知る法律事務所であり、知財にかかわる契約についても豊富な解説が加えられています。
知財の実務に携わる人にとっても、たいへん重宝する本でしょう。