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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
強い地元企業をつくる
近藤 清人 著
(学芸出版社)
地域の再生が深刻な問題となっている我が国ですが、地域の経済を支える地元企業において、高齢化や大手との競争により存続すら危うくなっている現状を打破するヒントとなる本です。
著者は兵庫県の但馬ご出身のようで、自分の地元に起こっている問題に直面し、デザイン・コンサルタント業を通してどのような切り口で立ち向かっているかが記されています。
上記の本の中で一貫して主張されているのは、「解決策は企業自身の中にある」です。
つまり、最近になって創業されたベンチャーではなく、この本で扱っているのはこれまで地元経済を支えてきた中小企業たちです。これらの企業には、これまでの技術や経験、そして地元における顧客や信用があります。
このような企業自身が有している資源をどう使い、どのように道を切り開いていくのか、興味を引く話がたくさん登場します。
一時的な刺激策ではなく、これからさらに50年、100年を生き抜く企業になるためのヒントが数多く盛り込まれていました。
じつは私も田舎(といっては著者に失礼ですが)の出身でして、地元はやはり同じような問題に直面しています。自分が生まれ育った町が衰弱し、廃れていくのを見るのは悲しいものです。
自然の流れといってしまえばそれまでのことですが、やはり何とかならないかと思うことはあります。
生まれ育った地元というのは、私にとって多くのものが含まれているんですね。両親や親戚などの血縁、友人、恩師、思い出のある場所など、私を形成してきた重要なものがあるのです。
それらが残っているというのがどれ程ありがたいことか、この年になって分かるようになりました。
本題から大きく脱線しましたが、自分にできることなど微々たるものですが、それでもできることは何かあるはず、と思いながら、日々考えることがあります。
女性が活躍する会社
大久保幸夫、石原直子(著)
(日本経済新聞出版社)
最近の流行りに乗っかってみたように見えますが、そうではありません。
私は商工会議所に加入しており、その中のとある委員会に所属しています。この委員会が今年、「雇用」をテーマにして様々な研究や議論を行うことになるため、様々な参考書を読んでいるところです。
女性の会社における活用というのは、何も今に始まるものではありません。
その昔、男女雇用機会均等法ができた頃に始まり、平成不況、リーマンショックなど、その時々に応じて浮上していた問題です。
今回も、少子高齢化という現状における一つの打開策として、官民ともどもこのテーマについて大いに議論しているようです。
この本、たいへん面白い本ですが、特に良かったのは、問題点に素直に切り込んでいったところです。
このような記述があります。
企業の採用担当者たちの共通の意見として、「採用段階で能力だけに着目して採用するならば、新人は女性が圧倒的多数になってしまう。」といわれている。それほど女性の方が男性よりも優秀な人が多い。にもかかわらず、管理職は男性が圧倒的に多くなるのは、新人から管理職になるまでの過程で、結果的に男性にとって有利な状況ができているからである。
20代の頃を思い出してみても、自分より優秀な女子の多かったこと多かったこと・・・。
この本は、その当然の現実を着実に踏まえた上で、問題点を指摘し、そして優秀な女性が管理職、経営者に進めるような仕組みを作るヒントを示しています。
私のいる業界においても、女性弁理士が皆優秀であるとまでは思いませんが、優秀な弁理士を集めたら、おそらく男性より女性の方が多いでしょう。
洞察力、分析力、他人と協力して仕事を進める能力、精神力、さらには謙虚さなどにおいて、女性弁理士は男性弁理士に比べて勝っていると思います。
弁理士は自由度が割と高い職業なので、女性弁理士は結婚、出産等を経ても継続して仕事を続けられますが、企業の場合には難しい状況があるのでしょう。
この本で示された仕組みが全て正解であるとは思いませんが、納得できることが多かったように思います。大胆な発想の転換が求められているように思います。
色彩学貴重書図説
北畠 耀
(雄松堂出版)
知人からのいただきものです。シュヴルール、マンセルなどの残した原稿、メモ、図面などを掲載した色彩学の歴史を物語る本です。
実は私、本業に関連して1級カラーコーディネーター「商品色彩」をとるため勉強中です。
アシスタントカラーコーディネーターは既に取得したので、いよいよ上記資格取得の準備中です。
この本に出てくる人物や内容は、3級カラーコーディネーター検定で出題されたものなので、よく覚えています。基本的なことではありますが、大事なことなので忘れないようにしたいと思います。
色彩学に関する本は、より広く、より詳しいものが多くありますので、上記の本で勉強するということはありません。この本は、色彩学の歴史的な面に特化したものです。
1級カラーコーディネーターのため勉強を始めたきっかけは、色彩と商標(商品等表示)についてセミナーをすることになったからです。
もちろん、商標法や不正競争防止法などの法的な面からの解説をするものですから、別にカラーコーディネーターである必要はありません。
ただ、色彩学の基本を知らずに色彩と商標を語るのは、些か不完全であると思ったことがきっかけで、色彩学もかじってみたというところです。
勉強したことは、役には立っていると思います。
色彩の特徴を多少とも踏まえて商標実務を見ると、違う角度からのアイデアが出てくることもありますので。
失敗の本質 日本軍の組織論的研究
戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
(中央公論新社)
ご存じの方も多いでしょう、名著です。
初版が1991年ですが、未だに書店では帯紙付きで並んでいます。
内容については、あちこちで紹介されていますので、今さら紹介しません。
私が今回この本を取り上げた理由は、内容について語りたかったからではありません。
私はこの本を今年の5月頃に購入しました。以前に図書館で借りて読んだことがありましたが、再び読みたくなったので購入したのです。
帯紙にはこう書かれています。
「都庁は敗戦するわけにはいきません!」「小池百合子都知事、座右の書」
そうなんです。築地問題で百条委員会が開催されたり、オリンピック会場について再考したりして、小池都知事がマスコミにもてはやされていた時期だったのです。
出版社(書店かな?)までも小池都知事の人気に乗っかっていたのがよく分かります。
そして衆議院議員選挙が終わり、結果はあのとおりです。
小池都知事をもてはやしていたマスコミの手のひらの返しようはいつもと同じです。
今日、本屋さんでこの本を見つけました。帯紙は小池都知事のままでした。
節操なく別の誰かに乗り換えているかと思いましたが、そうでもないようでした。
が、私には、この帯紙が以前とは全然違う意味を持っているように思えます。
地場・伝統産業のプレミアムブランド戦略
長沢 伸也 編著
(同友館)
この本は、早稲田大学ビジネススクールでブランド論を研究する先生の書かれた本です。
ブランド戦略という言葉は、今ではホントによく聞く言葉です。そして、この分野も相当に研究が進んでいるのでしょう。大体同じようなことが書かれていたり、セミナーで話されていたりします。
では、この本も同じかというと、そうでもありません。
著者の先生は、経営と工学の専門知識を有しているようで、技術にたいへん明るい方です。
つまり、ブランド化に成功する企業の技術的側面についても、的確に分析されているのです。
この点が大事なのだと私は思います。
卓越した技術や製品がまずあって、いつしかそれらはブランドというオーラのようなものを纏うようになるのだと考えています。
ですから、イメージやプロモーションだとか、デザインや商標などの側面のみから語られるブランド戦略というのは、非常に薄っぺらく見えます。
実体には触れずにオーラだけを語っても、何か上滑りしている感じになってしまいます。
上記の本で登場する企業は、有名企業ばかりではありません。タイトルのとおりローカルな企業です。
しかし、確実にコアな技術を有し、オーラを纏うに至った企業ばかりです。
読んでいて面白いのは、技術がブランドを成長させ、ブランドの成長がさらなる技術の発展を促すというプロセスが企業の中に形成されてくることです。
やはりこれらは不可分の関係にあるのですね。
そして、技術や製品がブランドのオーラを纏うに至る物語の形成過程には、非常に工夫がなされています。
それがブランド戦略の肝なのかなと私は思いました。
本の内容については書きませんので、何のことかサッパリだと思います。
一読をお奨めしたい本の一つです。