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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
エンタテインメント企業に学ぶ競争優位の戦略
丸山一彦 著
(創成社)
この本は、エンタテインメント業界の雄たるジャニーズ事務所、そしてジャニー喜多川氏を題材として、競争に勝つ企業が備えている特性を分析しています。
本の前半では、ジャニーズ事務所の発展の歴史、そして、ジャニーズ事務所に所属するアーティスト達の特性を示し、後半では、これらを前提として、いわゆる超優良企業と呼ばれる企業や老舗企業などの研究から抽出される特性が企業としてのジャニーズ事務所に備わっていることを検証しています。
私はビジュアル的にジャニーズ系とは程遠く、またジャニーズアイドル(ジャニーズ事務所では所属するタレントを「アーティスト」と呼ぶそうです。以下、この用法に従います)に特に興味もありません。
では、なぜこの本を読んだのか?
それは、著者が冒頭で述べているように、エンタテインメント企業が生み出すタレントは、目には見えない「無形の価値」を備えており、この「無形の価値」が人を楽しませ、人をもてなし、顧客を惹きつけるからです。
私も知的財産権という無体の財産権を扱う職業です。技術やブランドとは異なる「無形の価値」というものに興味を持ったのです。
内容については述べませんが、ジャニーズのアーティストにはそれぞれコンセプト(個性)があり、それらは「ワイルドセクシー系」であったり、あるいは「面白かっこいい系」であったり、顧客である女性の求めるアイドル像を徹底的に研究した上で付与されているようです。
また、現在のジャニーズのアーティストは最初にジャニーズJrに入り、ダンスと歌を徹底的に鍛えられるそうです。歌って踊れるアイドルであることが基本であり、これを充たすまでに成長して初めてメジャーデビューに進みます。
ルックスもさることながら、基本をしっかり身につけた上で、かつ女性を惹きつける個性を備えたアーティスト達です。人気があるのも当然ですね。
うらやましがっていても仕方がないですが、このようなジャニーズアーティスト達を長きにわたって生み出し続けているジャニーズ事務所を題材としてマーケティングを学ぶ契機となる本でした。
いつしか私も、これを楽しみ、惹きつけられていました。
日本農業の動き
点検 食料自給力
農政ジャーナリストの会 編
前回、農業に関する本を取り上げたので、ついでにもう一つ農業に関する本を取り上げてみましょう。
この本では、農業に関するテーマのうち食料の自給率の問題を扱っています。
自給率の計算手法は複数あります。詳しくは農林水産省のウェブサイトを参照して下さい。 一日一人当たりの国産食料から摂取されるカロリーを総摂取カロリーで割ることにより算出されるカロリーベースの自給率を見ても、ここ20年くらいは40パーセントのあたりを前後しており、相当低い水準です。
危機を煽るわけではありませんが、必要な食料のうち60パーセントを輸入に頼らなければならない状況というのは、安全保障上いかがなものかと思います。
食料の自給率を上げるためには、国内の農産物の生産量を増やさねばならないのは当然です。
この本では、大学や企業の専門家による様々な提言が盛り込まれています。
全体的な論調としては、農家(個人や農業法人)は他の産業分野において用いられる経営手法や技術を取り入れ、効率的に農業経営を行うべきであり、企業もまた積極的に生産・流通の場面に介入していくべきという流れです。
なるほどと納得させられる点もたくさんありました。さすがは専門家たちだとも思いました。
ただ、個人的には腑に落ちない点もありました。
それは、生産された農産物の流通市場についての話です。
高い品質管理が行われている日本産の農産物は海外で人気が高いため、販路として海外市場を目指すという話が出てきます。
腑に落ちないのはここです。輸出向けの農産物をいくら作っても、自給率は上がらないんじゃないの?と単純な私は思ってしまいます。
国内では消費しきれないため、余剰生産物の市場を求めて外国に進出するというのなら分かります。でも、上記のような自給率です。余剰など有るはずもないでしょう。
自給率を上げる話から、どうやったら国内産の農産物を輸出する話につながるのか、私には分かりませんでした。
私自身がもっと多面的に農業が置かれている状況を眺め、理解していく必要があるのでしょう。
農業の専門家ではありませんが、これからも農業を巡る政策や議論の動向に関心を持ち、見守ろうと思います。