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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
苦しかったときの話をしようか
森岡 毅 著
(ダイヤモンド社)
最近の話題になっている本です。
著者は、経営難に陥っていたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をV字回復させたマーケターです。
この本、こういうサブタイトルがあります。
「ビジネスマンの父が我が子のために書きためた『働くことの本質』」
私も父親なので、惹き付けられてしまったわけです。
私は、歴史学会の論考集など、およそ仕事とは関係のない書籍でも、興味を持てば読むことがあります。
意外にも、そういう本から知識だけではなくさまざまな教訓を学ばせてもらうことが多いのです。
一方で、書店の話題書コーナーなどに置かれている自己啓発本の類は読みません。主な理由は、そういう本に感銘を受けたり影響を受けるということがなくなってきたからです。
年のせいかもしれませんが。
ですから、今回はホントに久しぶりでした。
読後感は、感動したというわけではありませんでしたが、感心しましたし、共感することもありました。
著者の生き方に尊敬の念を持ちました(私と同年代の方ですが)。
ですが、影響を受けるということはありません。
頑なになっているのではなく、私は私のやり方があるからです。
それは、成功や失敗がたくさん詰まった、私自身の人生そのものだからです。
他人によって左右される度合いは、年をとる毎に少なくなります。「頑固ジジイ」とは、よく言ったものです。
ところで、久しぶりの更新になりました。
友人から、このコラムを見たよという声をいただきました。
読んでくれている人がいるんやね。ありがたいことです。
竜宮城と七夕さま
浅田 次郎 著
(小学館)
私のもっとも好きな作家、浅田次郎氏によるエッセイ集のご紹介です。
浅田氏の著書については、過去に「プリズンホテル」「勇気凛々ルリの色」を紹介しました。
誇張ではなく、浅田氏の著書は、一作品を除いて全て読んでいます。大好きです。
標記の本は、某航空会社の機内誌に掲載中のエッセイを加筆・修正して出版されたものらしいです。そのため、旅の話題が多く出てきます。
20年くらい前から読み始めた浅田作品ですが、氏もとうとう還暦を越えられたようです。
ラスベガスに行く話は、本誌以外にも度々登場しますが、今もラスベガス通いを元気になさっているようです。
「勇気凛々・・」を書かれていた頃には、それこそ寝る間もないくらい原稿の締め切りに追われながら、それでも僅かな時間を作り出してでもラスベガスへ飛び、疲れた脳をリフレッシュさせている様子がよく表れていました。
それから20年、すっかり大作家になられ、落ち着いてきたかにも思えますが、いやはや、ラスベガスでのリフレッシュは欠かさないようです。
本誌を読んでいて感じたのですが、文章や思考のレベルというか、格というか、そのようなものが格段に上がっているのです。
「勇気凛々」では、これから上昇する勢いだとか、苦労を積み重ねた男の持つ独特のセンスだとか、そういったものがにじみ出ており、強烈な感動や笑いをもたらしてくれました。
これとは異なり、本誌では勢いのようなものは影を潜め、代わって思考の奥深さや観察眼の鋭さなど、一流作家らしい、落ち着いた感動や笑いを味わうことができるのです。
「勇気凛々」では、銭湯をこよなく愛する氏がマナーを心得ない若者に激怒するエピソードが出てきますが、本誌での氏は、よもや激怒するようなことはしません。代わりに、時代の移ろいや銭湯文化の行く末などに思いを巡らせ、独特のユーモアを交えて話を締めくくります。
読み終わった後は、浅ちゃんは偉大な小説家になったのだなあとしみじみ思いました。20年も読み続けていると、何だか他人の気がしなくなります。
もちろん、知り合いでもなければ会ったこともない方です。でも、エッセイや小説を通じて氏の人間性が何となく分かった気になっているため、親戚の伯父さんのように錯覚してしまいます。
このエッセイを書いている途中で、相談の電話が入りました。どうやら急を要する模様。
これより本業に頭を切り換えることにします。
ベスト・エッセイ
日本文藝家協会 編
(光村図書)
毎年出版されているベスト・エッセイの2015年版を読みました。
小説家、劇作家、詩人、医師、研究者など、様々なジャンルで活躍されている方々が新聞や雑誌などに寄稿したエッセイの中から、編集委員により選択されたものが掲載されています。
とりとめのない日常のことやニュース、さらには世の中の深淵に迫るものまで、ほんとうに色々なエッセイが詰め込まれており、飽きることなく一気に読んでしまいました。肩の力を抜いて気楽に読めるものから大いに考えさせられるものまで盛り込まれているため、楽しみ方も色々です。
そして、さすがにベストエッセイです。上記のように話題も論調も様々ではありますが、各寄稿者が持っている「ものの見方」には、やはり光り輝くような冴えがあるように思います。とりとめのない日常の出来事を書くところから始まるエッセイであれ、寄稿者の視点を通じて描かれる物語の中には、センスというのか才能というのか分かりませんが、読者に「ほー、なるほど」と言わしめる何かが盛り込まれています。
文章は、それを書く者の能力の程度を明らかにします。当然のことですが、それは怖いことでもあります。こうしてここに書いている私の能力も、読む人に対してさらけ出されるのですから。
このエッセイ集の帯には、編集委員の一人である藤沢周氏の文が書かれています。
(以下、引用)
渋み、深み、洒脱、コク・・・・。
紅顔の美文も、老練の達文も、
いい顔したエッセイは、
生きる喜びを教えてくれる。
珠玉の味わいを
また一篇、さらに一篇。
(引用終わり)
まったくそのとおりのエッセイ集でした。
伝わっているか?
小西 利行 著
(宣伝会議)
現役のコピーライターによる著述です。
日常のコミュニケーションのヒントに始まり、ビジネス戦略やさらには地域ブランド創出に至るまで、面白く、そして分かり易く解説する本です。
場末のスナックを経営し、美味しいナポリタンを作るオカマと、その店の常連であるイルカが登場します。そして、そのスナックには様々な悩みをかかえた人々が来店し、オカマとイルカに悩みを相談し、解決して帰っていくというショートストーリーで構成されています。
言葉により技術を説明し、言葉により相手を説得することを職業としているにもかかわらず、言葉というものに対する考え方があまりにも浅かったことを反省させられます。
言葉の力は大きいのです。
(以下、引用部分)
たとえば、好きな人に「会いたい」気持ちを伝える時も、
今日、会える?
より
一分だけでもいいから、今日、会える?
と伝えた方が、相手はきっと喜びます。
(引用部分終わり)
このように言われたら、それだけで胸がときめいてしまいそうです。うーん、すごい!
ただし、誤解しないで下さい。この本は、言葉一つで他人を言いくるめたり、煙に巻いたりするような愚劣なことを開陳するような本ではありません。
むしろ、言葉を誠実に使うことの重要性を説き、同時に言葉の恐ろしさを教えてくれます。だからこそ、言葉というものを甘く考えず、真摯に言葉に向き合わなければいけないなと考えさせられるのです。
この本を読むことで、言葉を丁寧に使おう、そして、言葉を使う私自身の心をきれいにして、美しい言葉を語る人間になろうと思いました。
勇気凛凛ルリの色
(講談社)
浅田次郎氏の本のご紹介、第2弾です。
前回は、私に活力をくれた本、プリズンホテルをここでご紹介しました。
今回は、これもまた、泣いて笑って、そして明日も頑張ろうと思える「勇気凛凛ルリの色」です。
この本、1冊ではなく4冊のシリーズからなるエッセイ集です。
このエッセイを書くに至った経緯から始まり、著者のこれまでの人生経験や、著者が普段考えていることなど、幅広いテーマについて書かれています。
雑誌に連載されていたのですが、連載途中で著者が直木賞を受賞するくだりが出てきます。
その辺りから、それまでとはうって変わって凄まじく多忙になります。そして、著者が人生の扉を開き、一気に階段を駆け上がっていく雰囲気がよく伝わってきます。
驚くほどの執念を持って、ただ一途に小説家を志し、努力し続けた一人の男の人生がつづられた本です。読者に大いに勇気を与えてくれます。
私の友人の中にも、困難な道を進み続け、人生の扉を開いて生きている人達がいます。
心から尊敬するとともに、良い友人関係が長く続いています。道は異なっても、お互いの存在が励みになっているのだと思っています。
以下、余談。
昨日、とある会合に参加し、プロのクリエイター達のプレゼンテーションを拝見しました。
皆さん、ものごとや現象に対して独特な切り口でアクセスし、コピーやプロモーションを構成されていました。
懇親会で聞くと、その独特な切り口は、天性のセンスも有るのでしょうが、永年の訓練や経験の中で培われ、磨かれているようです。
あるクリエイターは、「全てを注ぎ込んで、心に残る一言というものを生み出します。表現次第で石ころにもなるし、宝石にもなるんです。」と言っておられました。
特許にも当てはまりそうですね。