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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
タイポグラフィスケッチブック
スティーヴン・ヘラー/リタ・タラリコ 著
(グラフィック社)
「タイポグラフィ」ってご存じですか?私は、つい最近まで、その言葉を知りませんでした。簡単にいうと、出版の世界ではフォントのような独特の装飾字体を指します。
でも、「フォント」とは違います。
その昔、フォントについての著作物性が争われた裁判例がありましたが、タイポグラフィはフォントとは異なり、書家による書と同様に著作物性が認められます。
この本は、欧文のタイポグラフィを集めたもので、字体というよりはもはや絵画というのがふさわしいような出来映えのものもあります。
眺めるというよりも鑑賞するという方が当たっており、飽きることがありません。
しかし、芸術的嗜好を充たすために私はこの本を購入したのではありません。もちろん、本業に必要だからです。
そう、著作権侵害が問題となる事件の相談を受けたのです。
創作性が争われる事件では、その分野における過去の作品や出版物などを幅広く分析する必要があります。その上で、果たして創作性があるのか、創作性があるとしてどの範囲で独占排他性を主張できるのかを検討します。
だから、私はこの本の他にも、タイポグラフィや欧文書体に関する書籍を調べました。
私は、特許公報を調べるのも好きですが、こういう調査をするのも好きです。普段の特許出願業務とは発想をガラリと切り換えて臨むのですが、この発想の切り換えが難しくもあり、面白くもあるのです。
弁理士の業務の醍醐味の一つであると思っています。
知的財産ファイナンス
小林 卓泰 著
(清文社)
2018年もいよいよ終わりです。
今年はこれまで経験したことがなかった仕事に携わる機会をいただき、たいへんでしたが楽しい一年でした。
標記の書籍は、特許の証券化に絡む案件で調査を行った際に読んだものです。これまで証券化による資金調達に関して業務で扱ったことはなかったもので、基本的な仕組みから勉強する必要がありました。この本のおかげで、随分と理解が進みました。
出版されたのは2004年で、わりと昔の本になるかと思います。信託法が2005年に改正され、受託財産に知的財産権が加わった頃、これを解説する書籍がいくつか出ていたのを記憶していますが、改めて読んでみても、私にはこの本が分かり易く、しかも知りたいことが細部まで解説されていてよかったです。
弁護士の先生が書かれたものなので、法的な問題点や処理がきちんと示されているため、実務の指南書としてたいへん役に立ちました。
商標や著作権に関しては、証券化を含む様々な資金調達の手法が進化してきています。一方、特許権の方はというと、なかなかに難しいようです。
ま、そうでしょうね。
当然のことですが、弁理士としては、やはり強い特許権を依頼者にもたらせるよう、出願時書面の質をブラッシュアップし続けないといけないなと思います。
これからも一年一年を大切にし、腕を磨いていきます。
そして、新たな経験を楽しみながら弁理士として成長し続けていきたいなと思っています。
皆さま、よいお年を。
新年明けましておめでとうございます。
弁理士の宮﨑浩充です。
民事尋問技術(第4版)
加藤 新太郎
(ぎょうせい)
完全な寝正月を過ごしてしまいました。
夜更かしをした上に、駅伝を見ながらコタツで昼寝する毎日。
よく風邪を引かなかったものです。
さて、そんな怠惰な正月の間に唯一読み耽った本です。
一度はマジメに勉強しておきたかった分野なので、年末年始を利用して一気に読んでしまいました。
司法研修所の元教官達が執筆陣に名を連ねており、深い考察と分かり易い説明で、たいへん面白く、また分かり易いものでした。
基本的には、主尋問を抜かりなくできるよう注意しながら読みました。読みながら、知財事件の場合、何を、どのように、どの程度訊いていくのか想定していました。
物証のウェイトが高いことから、尋問が重要になるような事件は少ないだろう、少なくとも自分には回って来ないだろうと思いながらも、もしそのような事件に巡り会ったときにも、慌てなくてもよいように準備だけはしておこうと思います。
しかし、読んでいて面白いのは反対尋問の解説です。元々日本では成功することが少ないだけに、僅かなチャンスを見逃さずに捉えるための技術・心構えが書かれていました。
一瞬の判断の差が結果を分けることもあるだけに、これについては普段から切磋琢磨しておかないと、どうにもならないという感じです。
こういう普段の業務とはほぼ関係のない分野を知っておくことも、どこかで役に立つかもと思いつつ、楽しんで読めました。
いい正月休みでした。
商標法の解説と裁判例(改訂版)
工藤莞司 著
(マスターリンク)
商標の世界ではたいへん高名な先生の著書で、平成27年に出された改訂版です。
同業の先輩に勧められて使ってみました。
商標登録の無効審判事件を受任した際、気になった問題点があったので、その問題点を先輩に聞いてみたところ、その先輩は「たぶん・・・だと思うよ。」と言いながら上記の本を調べてくれました。
あとで読んでみると、しっかりとその問題点に関する解説と判例が書かれていました。
他の書籍も調べてみましたが、サラリと書いてあるか、或いはそもそも触れられてもいないかのどちらかでした。
そんなわけで、上記の本を非常に頼りにしています。
ところでこの本、特許庁の実務の流れに対して、ときには苦言を呈している箇所もありますが、著者は商標の実務を築いてきたような人なので、そういうこともあるでしょう。
私のような弱輩者からすれば、そこまで思考を深めて実務を分析しているということに驚くばかりです。
先日は「新・不正競業訴訟の法理と実務」をここで紹介しましたが、商標系の係争事件を代理する際にはこれら2つの本を頻繁に参照しています。
では特許は?というと、今のところ受任している係争事件が無いのですが、調べるのによく使用するのは「注解 特許法」かな。それと吉藤先生。
古い本ですが、何と言っても試験勉強の頃から使っていた本です。もっとも理解している本ですし、また愛着もあります。
昨日辺りから風邪のため調子が悪い。寒い中、夜中まで飲み歩いたバチが当たったか・・・
新・不正競業訴訟の法理と実務
松村 信夫 著
(民事法研究会)
上記の本は、平成26年に出版され、不正競争防止法関連の論点を理論と実務の両面から解説したものです。
非常に高名な先生の単著によるものです。
不正競争防止法に関連する論点がほぼ網羅されています。
そして、商標権侵害訴訟で問題となりそうな論点についてもきっちりと解説されています。
私は、論点についての判断が示された判決例を検索する目的でこの本を参照しています。
しっかりとした解説が細部にわたり丁寧に記載されていますので、1つの項目の内容がたいへん長い箇所もあります。体裁としてはあまり工夫されていないようにも思えます。
しかし、この本、そしてこの著者の先生の特長は、何と言っても細部の論点までしっかり詰めてある点でしょう。
実務に携わる人間にとって、これ程ありがたいことはありません。
ありがたいというだけでなく、細部まで目配りし、事件の筋を正確に見通した上で戦うという基本的な姿勢を教えられます。
開業したばかりの頃はヒマだったので、一つ一つの事件について念入りに調べていたのが、忙しくなってくるとつい、あと一手間を惜しみがちです。
しかし、それでは依頼者に対して申し訳ないし、もっと言えば、その一手間を惜しむ人間は代理人になるべきではないと思っています。
知財の係争は、そんなおおざっぱな甘いものではありません。
この本を手にとって調べるたびに、気を引き締めて頑張ろうと思います。
余談ですが、日本シリーズでは、ホークスの巌のような強さが目立ちました。
あれは強いわ・・・。