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こんにちは、弁理士の宮﨑浩充です。
織田・徳川同盟と王権
-明智光秀の乱をめぐって-
小林 正信 著
(岩田書店)
この著者の作品については、以前ここで紹介したことがあります。
桶狭間合戦に関するものでしたが、今回紹介する上記の本は、桶狭間合戦後の織田政権の発展と本能寺の変に向かう過程を考察したものです。
この本では、明智光秀の地位、織田政権による支配の構造、さらには足利幕府体制に対する緻密な分析がなされています。その上で、事件の動機を鋭く解明していきます。
先達の研究成果を紹介し、ときとして信用性の高い資料を用いた批判を行い、無理のない論理で本能寺事件への筋を展開しており、研究書でありながらつい惹き込まれてしまいます。
この本、2005年の出版です。私の勝手な感覚ですが、2000年を越えた辺りから、小説などでも本能寺事件における秀吉や細川藤孝の関与を描いた作品が出てきたように思います。
背景には、本能寺事件に対する研究の深化があったのでしょうか。
いつも思うのですが、過去の事実を証拠に基づいて正確に再現するのは大変難しいことです。どうしても一面的な再現になってしまったり、真相にまでたどり着けなかったり、となります。
ましてや400年以上昔の事件、しかも政治・軍事上の機密に関わる事件です。正確に再現できる方がおかしいのかもしれません。
ところで、この本では、織田信長の政権の方向性について、徳川家康との同盟が大きな影響を有していたことを指摘しています。ここにもまた、たいへん興味深い考察が加えられています。
関ヶ原合戦では織田家旧臣の大名はほぼ東軍に味方したこと、豊臣家を滅ぼした後に家康が太政大臣に就任して朝廷を封じたことなどを挙げ、徳川幕府の基本は織田信長の政権構想に基づいていると結論付けています。
これが正しいのかどうか私には分かりませんが、論拠をはっきりと示して話の筋道を立てているため、一定の説得力があります。
本能寺事件に関する研究は、まだまだ完成されたものではないようです。今後のさらなる深化を楽しみにしています。